ートに先まわりして
今度は迷わぬ、まっすぐ階段を昇って行き、
そこらに人影のないのを見すまして
おどり場の穴の闇にスッともぐりこみ
ミシリとも音のせぬように用心に用心しながら天井裏の横木をさぐって
息を殺して、こうやって、しゃがみこみ、下からの光でポッと明るい
天井のスキまから下を見る
思った通りに五号室らしいが
いきなり、ギョッとする真近かさで
いぎたなく、着物のスソをチラホラと股のへんまでのぞかせたまま
こうやって、若い女が眠っている姿
これがその女か?
顔はあまり美しくはないが、太りじしの伸び伸びとした良いからだ。
女一人の部屋の隅に脱ぎちらした着物があったり
枕元には食い捨てた皿小鉢やタバコの灰皿がそのままになっている

間もなくドアにノックの音がして
女がやっと眼をさまして返事をすると
お前が入って来た。
吸いつくように息を殺してのぞいている私の眼の下で
お前が最初に何をしたか?
なんと、靴をぬいで上にあがるや、ものも言わず
眼をこすりながら、まだ横になった女の
ここからも見える、うすよごれた足の裏の土ふまずの所へ
いきなり顔を持って行き
鼻をふくらませてキッスをした。
する
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