や、独占外国資本の支配力などに関係させて話されていて
先生らしく、一方で学者としての冷静な数字をあげながら
それでいて美しい詩の朗読でも聞くように
人をマヒさせて一方の方へ引きずって行くところがあった
論證のしかたも言葉使いも完全に左翼のもので
鋭どく熱があった。
先生の書斉に最後に行った時に
来客たちと話していた先生は
終戦後、間がなかったせいか
言われることも、どこかしらオズオズした所が有ったが
今日の先生は既に疑いようのない左翼の理論家で
テキパキと確信に満ちていた。
私にはそれがわかった
思えば久しくこんなような言葉を聞かなかった
聞きながら私は死んだ兄の顔をマザマザと思い出していた
兄さん、兄さん、なつかしい、かわいそうな兄さん!
あなたが昔、私に教えてくれたので
今私は山田先生の話を理解することができるのです
そしてそれは私の幸福ですか、不幸ですか?
兄さん、私は泣きたくなります。
そのうちに、徹男さんの眼が私に近づいた
山田先生の声の中に徹男さんの声を聞いた
かわいそうな、恋しい徹男さん
私は今、こういう心と、こういうからだになって
あなたの兄さんの講演を聞いています
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