んに論じているのが
地区委員会の組織というような事らしい
山田先生の話しかたが一番ハッキリとして元気がよい
客の中の一人の四十過ぎの、あまり口は出さないで
ただニコニコとしているのは
刑務所から出て来たばかりの人らしい
「しかし、地区の組織を確立する前に
党員としての資格の線をどのへんに引くかという問題だなあ
それが決定しない限り、戦争中の個々人の戦争協力という点で
非常にデリケイトな問題が出て来ますよ
本部ではそのへんをどんなふうに考えているんですかね?」
三十過ぎの頬骨のとがった人が言うと
山田先生が、あの美しい微笑を浮べながら
「そりゃ、まったく、そうだ
たいがいの人が戦争中それぞれの形で
最低の抵抗線をどこに引いて、
どんな方法でそれを守るかという事では
みんな苦しんで来ているんだからね。
さしあたり僕なんぞも厳密にいえば
戦争協力の責任をまぬがれない。
しかし又それだけに、考えようによっては
そのような責任を強く感じている人こそ
今後の自分の活動に対して、他よりもより忠実になり得るだろうし、
その反対の人もいるだろう」と言っている
ハッとした私は!
死んだ兄を思い出した、死ん
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