種目ごとに精密検査して包装する仕事が当てられており
私は成績優秀として検査部の組長格の席が与えられ
拡大鏡の下でミクロメエタアつきのゲージに
部品を当てがっては最後の合格不合格をきめて行く役目だった
拡大鏡をのぞいている眼が
過労のために時々かすむ
すると額の眼の上の所が
ギリギリギリと痛んで、吐きたくなる
すると、兵士たちの事を思う
母のことを思う、兄の事を思う
山田先生の言葉が耳の中で鳴る
「われわれが、東洋を確保し、世界を平和に導くためには、今となってはもう、前へ前へと戦い抜く以外に途はない!」
そうだ、途はない!
私の眼は充血したまま、ハッキリする
レンズの中のゲージの鉄がギラリと光る!
夢中で私の手は部品を取り上げる
又取り上げる! 又取り上げる!
ダダダ、ダダ、グヮーンと音がして
ミクロメエタアの目もりがグラリと揺れて
次ぎの瞬間には私ごと、グンと跳ね上り、
近くで爆弾が落ちた事を知った時には、
窓のガラスは全部吹きとび
近くで負傷者が呻いていた。
そういう毎日の中で
私たちは日附けを忘れた
その頃の、ちょうど午の休けい時間に
徹男さんが私を訪ねて来た
そんな事は初めて
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