るだけで
そのたびに徹男さんの私を見つめる眼つきは
益々突き刺すようになるだけで、
それが私には、こわいような、憎らしいような
そして、どこかで幸せなような気持がしながらも
ただビシビシと日が過ぎた。
ああ、なんと言う日が過ぎたことだろう、なんと言う!
間もなく、空襲がはじまった!
爆音とサクレツと火と死!
人々は明日の事を考えることができなくなり
命も暮しも今の二十四時間だけのことになり、
やがてそれは一時間だけのことになって、
人は次ぎの一時間のことを考える必要がなくなった
私のM工場は、開戦後に新設されたもので
ほとんど完全にカモフラージュされた工場なのに、
どんな方法でわかるのか
まるでねらいうちをされるように
頻々として爆弾を落されて
吹き飛び、たたきつぶれ、燃えあがり
そのたびに工員や挺身隊の者が
五人、十人、三十人とケガをしたり、死んで行く
それでも工場は閉鎖されない
歯を食いしばって私たちは
昨日死んだ仲間の肉片のこびりついた
工具のハンドルにしがみ附いた。
私の通う計器部は
その工場の広い敷地の隅に
こじんまりと独立して建てられた小さい建物で
各種計器の金属部品を
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