人の眼に
それまで、あの人の眼にも、ほかの人の眼にも
ついぞ私の見たことのない不思議な
おそろしいような、それでいて、やさしい、やさしい色が差して
涙がうっすりとにじんで来て
「美沙子さん、僕は――」と低い声で言いかけ
しかし、それだけを言っただけで
あと、しばらく、その眼で私を見ていてから、
私のわきをすり抜けて、向うへ行ってしまった。
今までの私には、まるでナジミのないものが
私の中にグイと押し込んで来た
そして、それっきりでした
私が山田家に居る間に
徹男さんとの間に何かが起きたのは、それ一度きり。
間もなく私はほかへ出てしまい、
後は、たまに山田先生を訪ねて行った時に
あの人に会うだけでした
その前から私は夜の学校の勉強のかたわら
山田先生のお弟子さんの一人が
Gという新劇団の指導者であった関係で
そこのシバイを見ているうちに
シバイが好きになり、それをやりたくなると共に、
あるいは自分の才能を生かすためにも
自分の考えを実現して人のためになる仕事をして行くにも
良い芝居をするのが一番ではないかと思うようになり
先生にも相談すると賛成してくださる
田舎の兄に言ってやると、こ
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