ですから。
ただそんな人が、たくさん居た事は事実です
私はただ事実を曲げることが出来ないだけです
そして、私も戦争にこそ行きませんけど
そんな人間の一人でした。
徹男さんもそんな人間の一人でした
他の人たちもそうでした。
山田先生の影響の中で。
山田先生の思想を、私どもの身体で実践し生かすことで。
私どもを罰してください。

徹男さんは学生でしたが
兄さんの山田先生とちがって
沈うつな位に控え目な人がらでありながら
国の運命を深く心配していて
口には言いませんが、その頃から
国民が命ずるままに自分一身を
良かれ悪しかれ日本の運命の最前線に
投じたいと思っていたようです。
研究会に出席していても隅の方に坐って
山田先生や、ほかの人の烈しい言葉を
黙々として聞いているだけで
ふだんもそれらしい事は何一つ言いません。
いわないけれど、私にはわかりました
なぜわかったのだろう?
そうなんです!
ただ私にはそれがわかっただけで
なぜ、わかったのか、気が附かなかった。

また、どうして気附くことが出来たでしょう?
いっしょの家に住んだのは半年ばかりの間で
半年後には山田家を出て
新劇団の女優になっ
前へ 次へ
全91ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング