天になって、兄にその事を書いてやりました
兄も非常によろこんで「進歩的で、理智的な人間は、
どんな時代に、どんな所に置かれても、
そこで許される最高の意味で、最大の形で
明るく前進するものだ。
山田さんは僕が信じていた通り、
真実の進歩的思想家です。
今、時代は悪い。
すべての事は一方へ一方へ歪められるばかりで
良いものは追いやられ、おさえふせられ
自由はほとんど残っていない。
今後ますますひどくなろう。
しかし絶望というものは、われわれの行く手には存在しない
仕事は、牢獄の中にだって有る。
それを忘れないように!
希望を持ちなさい、美沙子!
山田さんは今でも
皆、学生の先頭に立って、
われわれを導いてくれた山田さんだ。
お前は山田さんの所に居られて、幸福だ。
山田さんに教えてもらい、それを守り、見ならいなさい
そして懸命に学び、正直に考えなさい」
かわいそうに! かわいそうに!
死にかけながら、兄はそう思っていたのです。
私は兄の手紙を山田先生に見せました
先生はそれを読みおわって、しばらくだまっていてから、
メガネの奥の誠実な眼をすこし涙にうるませて、
しっかりしたバスの声で言
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