に、のみこんだのです、
とにかく私はガツガツと
ただガツガツと、それがなんだか自分では知らないで
尊敬する先生の言葉をのみこみました。
先生はホントにえらい人でした
奥さんも立派なインテリで
明るい、積極的な、世話好きな方でした
二人のお子さんも身体がすこし弱くて、わがままだけど
陽気なお子たちです
先生の弟の徹男という方は
大学から帰ると、直ぐに自分の書斉に入って、
めったに出て来ず、出て来ても、ほとんど口をきかず
いつも、何かをジッと見つめているような人でした。
それが家族の全部で
みんな私によくしてくださいます、
食費だけは九州から送ってくれるのを差し出します
実際は女中の仕事をさされていても
「緑川さん、緑川さん」と言って、
みんな、女中あつかいにはなさいません。
いえ、たといただの女中であっても
この家では普通の家でするように
呼び捨てにして見くだしてコキ使うことはしないでしょう
自由主義といいますか進歩的といいますか
家の中が自然にそうなっていました
明るい理智的な誠実な空気でした
私は先生一家を心から尊敬し愛しました
一家の空気の中で、私はホントに幸福でした
私は有頂
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