閧ネ暮しをなすっているんでしょ? にくらしいわねえホントに! その、エハガキと言うのを見せてちょうだい金吾さん。
金吾 困るよ、そんな――
お豊 だって、そうなんでしょ?
金吾 なにが?
お豊 春子さんのためなんでしょうが?
金吾 だから、なにがよ?
お豊 あんたがおかみさん貰わねえのがよ? ……(返事なし。ビューと戸外の風の音)え、そうでしょ?
金吾 そんな――
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ヒューと戸外の風の音。やがてその音の中から男の叫び声が近づく。
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喜助 うわあ、ちしょうめ!(と、これは風をののしって)おおい、柳沢金吾う! やい、金吾う! ここ開けろいよう! 早く開けろうっ!
お豊 ……(声を聞きつけて金吾と顔を見合せていたのが)あら、壮六さんじゃないかしらん?
金吾 え、壮六――? ……(戸口に行く)
喜助 (外で)早く開けろう、阿呆め! 寒くてならねえわい、早く開けろう!(戸を蹴る)
金吾 (戸を開けながら)誰かね?
喜助 (ガタピシと押入るように土間に入って来ながら)わあ、なんしろ、えれえ雪だあ、降るのはやっとやんだが、見ろ膝っ小僧まで雪だらけだ。
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