ヨっへ――誰でもねえ、喜助だあ、海尻の喜助だよう。しばらくだなあ、金吾!
金吾 喜助さんつうと、お前は、あん時の――?
喜助 そうよ、笹屋でおのしに取って投げられた喜助だい。へへ、今日はそのお礼を言いにやっち来たぜえ。
金吾 そらあ、しかし、あん時はお前があんまり壮六ば叩きなぐるもんで、見るに見かねて俺あ、ただナニしただけで別に悪気あ無かったこって――
喜助 へっ、悪気がなくて、どうしてシトのこと三間も投げとばせるけえ? はは、あん時あ俺あ、じょうぶ酔っていたからな、どんなあんべえで取って投げられたのか、わからんかった。今日はハッキリ勝負を附けべえ。まあま、急ぐ事あ無えや。覚悟うすえてユックラとやるべし。やれどっこいしょと。(あがりばなに腰をかける)
お豊 そいつは、しかし喜助さん、そりやムチャだわ
喜助 いよう、やっぱし来てたな、お豊、外から入って来てまっ暗だもんで見えんかった。どんなあんべえだ、キツネの談判は?
お豊 なによ、人聞きの悪い事言わんとおいて
喜助 そんでも、ここの金吾をだましに通ってるつうでねえかもっぱらの評判だぞ。あっはは!
お豊 そんな事どうでもええけど、いつかの
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