jardin fleuri, Adieu Yokohama !〕
勝介 これで横浜も、いっとき見おさめだ。だが、私などが、アメリカに渡った時分にくらべると、ここらも立派になった。船などもあの頃の三倍以上の大きさだ。
春子 お父様、私……フランスへなんか行きたくなくなった。よそうかしら。
勝介 はは、今になって馬鹿なことを。あんなにパリに行きたがっていたくせに。
春子 ええ、そりゃパリは見たいけど。
勝介 はは、敏行君が首を長くして待っている。マルセイユまで迎えに出ている筈だ。
春子 でも、敦子さんがいないんじゃつまらない。
勝介 よっぽど気が合うんだねえ、あの人と。
春子 ごらんなさい、敦子さんも泣いていらっしゃるわ。
勝介 それよりも、そら、お前こそ涙を拭きなさい。はは、パリで待っている御亭主よりお友だちが恋しいなんて、いつまでもそういうネンネでは困る。そらそら、その花をよこしなさい。重いだろう。また、長与さんでも島津でも、よくまあこんなに花をくれたもんだ。
春子 農林省の方も下すったのよ。こっちの、これ。
勝介 やれやれ。と、しょと。
春子 あら、敦子さん、こっちへ向いてお一人
前へ
次へ
全309ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング