に亡くなっていました。……あの無口な人が時々私のことを話しだしたりしていたが、つい二三日、風邪ひきかげんだと寝ていた末にポクリとなくなった。その告別式の時には、非常に盛大なお葬式だったそうですが、金太郎君は私のことを大変なつかしがって、ぜひ泊っていけと何やかやとご馳走してくれるので、五六日私は泊りましたが――お墓参りもしました。お墓は部落のお寺にあるのではなくて、例の黒田の別荘という山小屋の建っていたところにありました。行ってみると山小屋はキレイに焼けおちてしまっていて、あとは柱のたっていた敷石だけが家のかっこうに残っているだけで、その片隅に金吾老人のお墓が――質素な小さなお墓がありましたが、そのお墓のちょっとわきにもう一つお墓があります。墓のおもてをみると戒名が彫ってあるのですが、その戒名の関係から女の人のお墓だとわかります。それで私は金太郎君に、「これは誰のお墓? たしかお父さんにはおかみさんはなかったと思うんだが?」ときいたら、金太郎君は、「いや、そうじゃないんですけど」と言葉をにごします。そいで私は金吾老人のお墓にまいるついでに、そのお墓にも水をあげて拝んで帰って来ました。その
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