積み込んでから塗りこめるんで。
香川 じゃ、後の方をもう少しやるかな。……(と、ベタベタとまた仕事をはじめながら)これだけのカマで、一度にどれ位の炭が焼けるのかな?
金吾 へえ? そうでやすね、そこに積んである原木で大体まあ二度分ぐらい有るから、一度で先ず十俵たらずと言うとこだ。まあ四五回火入れをすれば、別荘とおらんとこの分の炭あ取れる。(ドシンドシンと石で[#「石で」は底本では「右で」]床を叩きながら)
香川 君あ、こんなカマの築き方なんか、そのほかいろんな百姓の仕事、誰に教わったの?
金吾 誰に? そうさなあ、誰に教わったと言うわけでもねえですよ。はゝ、自然に、この、見よう見真似で――
香川 そうかなあ。……僕ら東京へんで育った人間は駄目だな。
金吾 なんでやす?
香川 いや、これで僕なんぞ農科なんぞに行ってて、実習もさんざんやってるんだ。それがしかし一つ一つの実際の事になると、ほとんど役に立たないもんな。君なぞは、見てると、着々として山を買いとって、そいつを切り開いて畑は作り上げているし、小さいながら家もある。それを君あ四五年の間にやって来たと言うじゃないか。えらいと思うなあ。
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