だりながら)さ、金吾さん!
金吾 へえ。おーい! (と歩きながら下へ呼ぶ)
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三人の斉唱の「さすらいの歌」が急速に近づく。
音楽
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[#3字下げ]第4回[#「第4回」は中見出し]
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敦子
春子
香川健一
金吾
音楽
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敦子 (語り、中年過ぎになってからの)はい、私が敦子でございます。さようでございますねえ、あの当時、つまり明治の末から大正の初めにかけての、東京の割に良い家庭で苦労知らずに育って、高等教育を受けた私のような娘の生意気さと申しましょうか、ちょうど、イブセンの「人形の家」が、紹介されたり、「青踏」という雑誌が創刊されたり、新らしい思想が外国から盛んに入って来たりした時代の空気のせいでもございました。それに黒田の春子さんはあの調子で、何かと言えば敦子様々々々と私のことをお姉さま扱いになさいます、つい、自分にはなんでもかでもわかるような気持になっていたのですね。今から思うと冷汗が流れます。でもほかの事は、まあとにかくとして、あの頃の、金吾さんという人の、春子さんに対す
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