い。なるほど、僕は法科で君は農政方面をやってるんだから、そう言う立場の違いもあると思うけどね、僕あ、やっぱり現代は力の時代だと思う。権力と金を握ったものが支配するんだし、していいと思うね。社会主義にしたってマルクスなんぞの理論など、やっぱし土台はそこに置いてあるから現実性があるんだ。
香川 それはそうかもしれない。しかしそれにしても人道主義が存在の価値を失ってはいないと思う。又永久に失う筈はない。僕が言うのは、本来平等に生みつけられた人間がだな、つまり、一例をあげると、君や僕はたまたま金持の家に生れたからこうして大学なんかに行っておれる。だのに多くの貧乏な家の子弟はだ――そう、たとえば、今の金吾君でもいい、あれで僕等と同じ年頃の青年だよ、それがただ貧しく生れついたと言うだけの理由でああして泥んこになって働らくだけで本一冊読めはしない。これは君、いかになんでもあんまり不公平すぎることを僕あ――
敏行 そんな事言ってたら、僕らは一足も歩けないし、一口も食えなくなるよ。愚だと思うな。僕はそんな事平然として、こうして二度と味わえない青春時代を楽しむね。それよりも、君が特にこんな所に来てまでだな
前へ
次へ
全309ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング