、感傷的なお嬢さん方の前で、そ言った人道論を言い出している所に、僕あほほえましきものを感ずるね。
香川 すると何か、僕は心にも無い事を言っていると君は言うのか?
敏行 まあまあ怒りたまうな、ハハ。そこに僕は君の青春を感ずると言ってるんだ。いいじゃないか実に!
香川 そいつは君、あんまり失敬な――
春子 いいじゃありませんの香川さん! もういいわ。敏さんも少し変よ。いいじゃありませんか、そんなこと。もう帰らない? すっかり寒くなって来ちゃった。あら、敦子さんと金吾さん、どこへ行っちゃったかしら?

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ザーッと風の音。水の音。
ギャアと鳥の鳴声。
金吾と敦子の足音がフッと停まる。
[#ここで字下げ終わり]

敦子 あら、みんなあそこで坐りこんでしまったのかしら?
金吾 そうでやすねえ。
敦子 おーい(遠くで微かにやまびこ)……聞こえないようね。もう帰りましょうか? どうせ、もうこんなに薄暗くなって来たんですもの、今日はこれ以上登れやしないんじゃなくって?
金吾 そうでやすねえ。
敦子 急に寒くなって来たわ。おりて行かない? それにね。(笑いを含んで)ああして春子さんが
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