、こうんな綺麗な花!
敦子 ホント! はじめて見たわ、こんな可愛い花! なんと言うの、これ、金吾さん?
金吾 ああ、こいつはホントから言やあ秋口にならねえと咲かねえ花でやすがね。狂い咲きだなあ。ダズマと、この辺では言っていやす。
香川 ああ、そりゃたしか高山植物の一つだ。
敏行 (かなり離れた所から)おーい金吾君、こっちだねえ?
金吾 (それに向って)そのう、右の方でやーす!

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(ザーッと谷川の水音で、すべての声が消えて)

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(再び「寮歌」)

歌(第二番の歌詞)
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豊かにみのれる石狩の野に
雁の音はるばる沈みて行けば
羊群声なく牧舎にかえり
手箱のいただきたそがれこめぬ
雄々しくそびゆるエルムの梢
打振る野分に破壊の葉音の
さやめく甍に久遠の光
おごそかに、北極星を仰ぐかな。

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(一同かなり疲れて、ユックリした調子になっている。途中から敏行だけ歌うのをやめる)
[#ここで字下げ終わり]

敏行 わあ、くたびれたあ、まだよっぽどあるかねえ、中岳のてっぺん?
春子 ほらごらんなさい、意苦地なし!
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