うものはありがたいもんで当ったりは絶対にしない。毒のあるものでも食った時には泥を食うと毒消しになる位だ。君もなめてごらん。地味を見るにはこれが一番だぞ。ふむ(なめ試みている)
金吾 そうでやすか……(これも指をなめる)
勝介 そうさ、すこし酸性が勝ち過ぎるように思うが……灰は入れたね?
金吾 はい、ここを開く時に雑木だのボヤを二三度焼きやしたから灰は相当入ってるわけで。
勝介 うむ……でも、まあ泥はこれでもよかろう、苗を植えて見たかね?
金吾 へえ、そっちの、その囲いに一坪ばかり、寒さに強いと言うモミを――壮六が試験所でチャンと湯につけて準備して持って来てくれやしたから蒔きやした。
勝介 出たかね、芽が?
金吾 出るにゃ出やしたゾックリと、でも間もなく、みんな焼けたようにいじけちゃって、一本も育たねえんで。どうも水のタチが合わねえようで。
勝介 そうさ、水のタチと言うよりも、温度じゃないかね? 山水だからな。温度は計ったかね?
金吾 へい、水口のところ、しょっちゅう手で計っちゃいますけど、どうも、そう言えば、どんな風にしても冷っこ過ぎやして。
勝介 そりや寒暖計が一本なくちゃ駄目だ。よ
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