中で水音をさせながら)これは、黒田先生いいあんべえでやす。
勝介 (立ちどまって見まわして)えらい所に水を引いたが何が出来るんかね?
金吾 へい。なんとかして水田にしたいと思いやして、去年からこうして――
勝介 ふむ、ここを水田にねえ? そりゃ、しかし、無理じゃないかな。
金吾 へえ、みんなそう言いやして、壮六などもしょせんそれは出来ねえ相談だからよせと言いやすけんど、とにかくやってみねえじゃわからねえと思いやして、まあ格好だけはつけてみやして。
勝介 でもここらは大体が赤土だろう?
金吾 はい、そんで、そいつを先ず何とかしようと、草をうんと踏んごみやして、壮六は三尺位は床土を仕込まねえじゃと言いますからわしは四尺仕込む気で、そいでまあ、色だけは大体こういうタンボべとみてえになりましたがさて、どんなもんでやすか。
勝介 (次第に釣込まれて熱心に)そうかね、そりゃ大変だ、どれどれ(と指に泥を附けてなめる)
金吾 (あわてて)そんな、この泥をなめたりなすっては、きたのうがす。
勝介 なあに、コヤシが入っとるかね?
金吾 コヤシは入れませんが、とんかく、当りでもしやすと。
勝介 なに、土とい
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