見ちゃ泣き出して、よ、眼え泣きはらさねえ用心するだなあ!
金吾 野郎! なによぬかすっ!(大なたを、振りかぶる)
壮六 (小走りに逃げる真似をしながら)はははは! じゃ、あばよ!(遠ざかりながら)馬流のお祭りにゃ、ごっつおして待ってるから、きっと来うよう!
金吾 おう! フフ!(見送りつつ軽く笑う)
壮六 はは!(と森の奥に笑声をひびかして歩きながら、盆踊りの歌)
[#ここから3字下げ]
盆が来たのに、踊らぬ人は、木ぶつ、金ぶつ、石ぼとけ……
(そのひなびた明るい歌声が森のかなたに)
[#ここで字下げ終わり]
金吾 さあて!(と低く言って、再びナタを振りあげてガッと木を切る。その音)

音楽


[#3字下げ]第3回[#「第3回」は中見出し]

[#ここから4字下げ]
壮六
金吾
勝介
敏行
春子
敦子
香川
[#ここで字下げ終わり]

壮六 (語り) その次ぎの年の春に別荘はきれいに出来あがって、その夏から黒田様御一家がズーッと毎年おいでるようになりやした。そうでやす、あれは明治の四十一年ごろですからねえ、今でこそああして、いくらか開けやしたが、その当時は野辺山かいわいには狐や狸はも
前へ 次へ
全309ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング