スそうでね。右の足より一寸ばかり短かくなったので、びっこを引くけど、もう痛くもなんともないの。敏ちゃんこそ、一郎を負ぶい通しじゃ大変だろう。いっとき、おろしなさいよ。
敏子 いえ、いいんですの。
一郎 (幼児。この子は最後まで時々幼児の言葉で何か言う)お母あちゃん。あんよ、あんよ!
金吾 いやあ、あの時、空襲の中を俺がリュックに入れてかけだした坊やが、こんなに大きくなるもんでがすねえ。
敏子 金吾おじさんには、お母さんと言い、この子はこの子で、命を助けてもらった。あたしはホントに何と言えばいいでしょう?
敦子 まったくね、何と言えばいいだろう? こうやって春さんのお墓の前で敏ちゃんと一郎と金吾さんと私と、それに金太郎ちゃんに杉夫……さてね、お互いに今さら何と言っていいだろうねえ?
金吾 はは、そうでやすよ。そいでも、敏子さんと坊やがこうして元気でいて、杉夫さんが無事に復員して来なすったのは、何よりでがした。
敦子 いえね、戦争がすんで直ぐ、こちらへお墓参りにと思っていたけど、何やかやと、ゴタゴタしていてね、そこへ四五日前に杉夫が戻って来て、いえ、まだ外地に渡っていなかったので早かった。
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