セ (誰も居ないベンチにかけて、低い声で歌をうたっている)勝って来るぞと、勇ましく、誓って国を出たからは……
お仙 ……(道の方から下駄の音をさせながら、待合へ入って来て)金太よ、まだ待っていたかよ?
金太 ああ姉ちゃん、どうしたんだ?
お仙 どうもしねえ、お前を迎えに来たんだねえか。みんなもう夕|飯《めし》を食うんだから帰るべ。そうやってお前は、東京から帰って来てからこっち五日も六日も、毎日昼すぎになると駅さ来て、おじさん帰るのを待ってるが、帰る時が来れば、おじさん、ちゃんと家に寄ると言うんだから――
金太 そんでも汽車が、もうひとつ、すぐ着くだから、それを見て帰らあ。お姉ちゃん、先に帰れ。
お仙 おめえってば、すぐそったらこと言う。汁が冷えっちまうてば。(言ってるところへ改札係の駅員が来、ガチヤン、ガチヤンと改札口をあける、と同時に下りの列車が近づいてくるひびき)
金太 そら見い、汽車が来た。
お仙 あら、そうだ。(汽車がひびきを立てて、プラットフォームに入って来て止り、四五人の乗客が降り、みな黙々として改札口を出て行く足音など)
金太 お父ちゃん、乗ってねえかなあ?
お仙 そら見
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