ィをすましている。それに向って駅の事務室の辺からラジオ。「ガガ……B29[#「29」は縦中横]の大編隊、南方洋上より帝都に侵入しつつあり、ガ、ガ、キイキイ」言ってるそばから、ダダーンダダーンと高射砲のひびきがはじまる)
てへへへ、だしぬけだぜ。警戒警報なしだ。おい、おじさん、なんだかこらあ、でっけえぞ。ここに居ると危ねえから、そこを出て、右へ行って、あの段々を上ってね、あの上の山へ行ってなよ。なあに、切符が手に入ったら、そっちへ行ってやるからね。
金吾 ありがとう! 頼むよ。そいじゃ春さん、さあ!(春子を助けおこす。そうしてる間も、遠くで爆弾の落ちる音。とうの昔に少年は駈け去っている)
春子 私はいい、私はいいから金吾さん、一郎を――
金吾 よしっ、この子はこうやって、リュックに入れて、俺がこうやって背負うから。さあ春さん、こっちだ。そら、えらい人だから、俺の手を離すでねえだよ。
春子 金吾さん、恐い!(二人は小走りに駅の外へ出て行く。七八人の人も、なだれを打って駅の外へ。ただし、みんなくたびれはて、しかも空襲には馴れているので、殆ど声はあげないで「あっ!」「こっちだ!」「山へ逃げろ」
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