Aその底から紙包みをとり出して、竹の皮を開ける)握り飯が二つ三つある。これを食べなんし。
春子 ううん、私はちっとも食べたくない。金吾さん、食べなさい。
金吾 だって、ズーッと、春さん、何にも食べていねえんでがしょう。今の内にちょっと食べておかねえと――
春子 そうお、そいじゃ……敏子や敦さん、変りないかしら?
金吾 無事でがす、敦子さまは横浜の空襲で足をちょっと怪我しなすったが、大したことはねえ。敏子さまはそれの看病やなんかで保土ヶ谷にござらしてね。
春子 そう、やれやれよかった。でも金吾さん、私たちこれからどうしたらいいの?
金吾 そうでやす……ええ、この坊やのことがあるから一度保土ヶ谷へ行かざあなるめいが――
春子 でも、このまま野辺山へ[#「野辺山へ」は底本では「野辺力へ」]汽車で行っちまえないかしら。私もう恐いの。どうせ敏子も敦さんも、後から野辺山へ来ればいい。
金吾 だけんど、とにかく保土ヶ谷じゃ、みんなで心配なすっていやすから、こうやって、あんたや坊やが助かったことだけは知らせねえと――
春子 でも、それはすぐ葉書か電報でも出して知らせりゃいいんじゃない?
金吾 そうだな
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