翌ノ)どうもすまねえ、そいじゃその児を、おらが――
若い女 そうですか、どうか、あの、大事にね。(一郎を渡す)
金吾 どうもありがとうさん。(若い女が、これも小走りに去る。そこらの人々の騒ぎ、騒ぎの中に金吾が、春子を寝せたタタキのわきのリュックの上に一郎をそっと寝せてから)春さん! 春さん! わかりやすか? 俺だ、金吾だ。
春子 (やっと気がついて、弱い声で)ああ、金吾さん、どうしたの、ここ何処?
金吾 ここは上野の駅だ。
春子 あの、それで一郎は? 一郎はどうしたの?
金吾 坊やはちゃんとここで無事で寝てるだから心配しねえで。どうして春さん、こんな所にいやした? いや俺やな、あんた方を探しに、四、五日前に信州から出て来て、銀座へ行ったが誰もいねえし、そいから市川へ行ったり、保土ヶ谷へ行ったりしても、あんた居ねえしな、いくら探しても見つからねえもんで、とうどう、とにかく一度、信州に帰るべえと思ってね、そいでここに来て並んでたとこだ。
春子 そうお、どうもありがとう金吾さん。私はね、なんですか、さっぱりわからないけど、空襲が恐くって、そいで一郎に怪我をさしてはいけないと思ってね、そいで市
前へ
次へ
全309ページ中288ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング