ナたれたか、胸の辺を怪我でもしたらしいや。
中年の男 ああ、いやだいやだ。
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その間に、少し静かになっていた向うの人立ちの間から、女の叫び声で、「私は野辺山へ行くんです! 切符を一枚下さい! 野辺山へ行くんですから、私に野辺山までの切符を一枚、お願いですから!」と言う声がきこえる。
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金吾 おっ!(叫んで、とび上り、そちらへ向って駈け出す。そのトットットットという靴音)あの――ちょっとごめんなして、ちょっと!
青年 (金吾から突きとばされて)何をしやがるんだ!
金吾 ちょっくらごめんなして!(人々をかきわけて、前へ進む)
春子 野辺山へ行くんです! お願いですから!(声もかれ、疲れはてて、喘ぎながら叫ぶ)
金吾 あ! は、は、春さん! 春さんだあねえか!
春子 え? どなた? ああ、き、き、金吾さん? あなた。金吾さん! ああ……(唸って、ガッカリして前のめりに倒れかかる)
金吾 春さん、しっかりして。俺だ、金吾でやす。しっかりして!(金吾の腕の中で気を失う春子。その背中にくくりつけられた赤ン坊の一郎が、眼を覚して、ウ、ウーン、ウ、ウー
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