^剣にそう言ってお辞儀をしながら、すでに炒豆を口の中に放りこんでバリバリと噛んでいる)
金吾 ふふふ……(相手がなむあみだぶつと言ったのでおかしくなってちょっと笑いながら)君はなにかい、いつもここらに居るのかい?
少年 そうだよ、家は焼けちゃったし、しょうがねえもん。
金吾 そうかよ――君はこの辺で、そうさなあ、もういい年のおばさんで、ちっちゃな赤ン坊をおぶった、そうだ、少し頭が馬鹿になってるような人だがな、そういう人を見かけなかったかね?
少年 そんな人なら一ぺえ居るぜ。
金吾 え?(ちょっとギョッとするが、すぐにガッカリして)……いや、わしの探しているのは春――春さんと言うて、春子と言うおばさんがな、おぶっている赤ン坊は、一郎と言って――
少年 おじさんのおかみさんかい?
金吾 いや、そうでねえが、ちょっと親戚でな。
少年 わからねえなあ……おじさん切符はあるのか? なけりゃ俺《おい》らが手に入れてやろうか、代を二倍ばっか出してくれると手に入れてきてやるよ。
金吾 そうかよ、実はまだ買ってねえんだ。ええ、小諸から小海線で野辺山という所まで行きたいんだがな、じゃひとつ頼むから、金を―
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