ノ、この上をとびすぎて行く)

(あと、シーンとして何の物音もしない。遠くで、ダダーン、ダダーン、ダダーンと、無駄に乱射される高射砲のひびき)
[#ここで字下げ終わり]

金吾 金太、何ともなかったかや?
金太 うん、大丈夫だ。
男 ふん、へっへ、うーむ。(唸り声とも笑い声ともつかぬ声を出す)
金吾 あんた、何ともなかったかね? ええ、――おっ!(口の中で声を出して暫く相手を見守っていたが)……ええと、あんた、もしかすると、敏行さんじゃねえんでやすかね? 黒田さんの敏――ああ、やっぱりそうだ!
敏行 あん? 誰だよ?わしは黒田敏行だが、そういう君は――?
金吾 やっぱりそうでやした。柳沢の金吾でやすよ、信州の。
敏行 ……ああ、柳沢金吾君か。そうか、どうも――すると君も、なにかね、春子や敏子に逢いにやって来たのか? そうか。わしあ、さっきここに来たんだが、この内には春子も敏子もだあれも居ないよ。
金吾 そうでやすか、するつうと、春さんや敏子さんの行った先はわからねえんでやすかね?
敏行 なあに、壁にな、なんか置手紙のようなもんがピンで止めてあって、なんでも市川とか保土ヶ谷とか、書いてあ
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