フうと言ったそうです。そいで金吾さんもフラフラッとその気になったそうですの。
そいでも二人が死ぬと、敏ちゃんや私や、そいからお豊さんや壮六さんが悲しがるから死んではいけない、と金吾さんがそう言うと、春さん一とき考えていたそうですけどね。そこへトラクターの音が、まるで機関銃のようにひびいてきて、そいで春さん、ホントに恐がって、戦争がくる、戦争がくると言って、また崖からとび下りようとしたそうですけどね、その音をきいてこらえている間に、谷底へとび下りるキッカケをなくして、死なないですんだそうでしてね。何のことはない、春さんがあんなに恐がっていたトラクターの音から心中するのを助けて貰ったようなものだ、と金吾さんは寂しそうに笑っていましたっけ。
人間生きているといろんなことがあるもんですね……まあ、そんな風にして私は落窪で二三日暮して、一人で横浜へ帰って来ましたが、そうです、あれから二月も経たない、その年の暮に真珠湾攻撃ということがあって、いよいよ大戦争が始まってしまいました。あちらもこちらも、上も下も、もう、てんやわんやと言いますか、息もつけないような有様の中で、すべてのことが変って行きました
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