「谷底になっているのね。落っこちたら粉微塵だわ。
金吾 はっは、だからこっちへ坐りなして。(春子のために草をないでやる)
春子 敦さんや金太ちゃんや、お仙ちゃんは何処へ行ったかしら?
金吾 どうも、道を真っつぐ行ったらしいで。なあに、どうでそう遠くは行かねえんでがしょう。
春子 そうお。ああ、やれやれ何という、いい風が吹きあげてくるのかしら。
[#ここから3字下げ]
その谷の風に乗って、遙かに敦子と金太郎とお仙のうたう「北大寮歌」の歌声が[#「「北大寮歌」の歌声が」は底本では「北「大寮歌の歌」声が」]流れてくる。歌詞をうたうのは敦子だけ。金太郎とお仙はメロディーをつけている。
[#ここで字下げ終わり]
金吾 ああ、敦子さま達がうたっていやす。
春子 いい声! 何の歌だろう?
金吾 札幌の大学の歌でやす。都ぞ、弥生の――(一節をうたってみる)
春子 ああ、思い出したわ。札幌農大の寮歌、そうだ。思い出したわ。そうそう、あれはいつ頃だろう、ねえ金吾さん。私が女学校を卒業した年の夏だったかしら。あのそれ、ここにみんなでやって来て、あなたに案内して貰って、八つ岳の途中まで登った。そう、あの時
前へ
次へ
全309ページ中244ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング