ノは敏行や香川の賢一さんもいらした。思い出したわ。
金吾 はは、そうでやす。あれからもう随分になりやすねえ。
春子 敏行……香川さん……敦子さま……どうしたんだろう、そうだ、いえ、あの――
金吾 なんでがす?
春子 (何のキッカケもなく不意に涙声になって)駄目ね、私って――違ってる。みんな違ってるの。そうだ[#「違ってる。みんな違ってるの。そうだ」は底本では「遅ってる。みうだ」]、あの時、ホントは私が一番好きだったのは金吾さんだったのよ。そうなのよ。だのにどうしたんだろう、私って、自分の行きたいところへはどうしても行けないんだわ、そうだ、私はあの時に、金吾さんのお嫁さんになってりゃよかった。(とりとめのない、子供らしい、しかし、それだけにひどく真卒にひびく)それが駄目だわ、私と、それからホントの私の間に何かはさまっている。年中それが邪魔するの。そしてそっちの方へ行けない。どうしても私は、私のホントにしたいようには出来ないのよ。死んでしまえば、こうではないかも知れないわね、何故かしら?
金吾 いやあ春さん、そんなことはもうお考えにならねえで。せっかくこうやって、体が丈夫におなりなしたんだ
前へ 次へ
全309ページ中245ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング