Aそう駈け出すでねえ。(呼びながら、歩き出している)

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ザアーャ[#「ザアーャ」はママ]と風の音。
遠くで山鳩の声。
風に乗って急に谷川の音が激しくなる。
[#ここで字下げ終わり]

金太 (先に立って、草に蔽われた小道を元気よく登って行きながら、うたう)見よ東《ひんがし》の朝ぼらけ……
お仙 金太よ、急ぐでねえよ。そんなに早く歩けねえだねえか。
金太 姉ちゃんなんか、町ばのもんな駄目だなあ。これ位のとこ、そんなに歩けねえのかよ。
お仙 金太なんず、野辺山の人間になったら、まるで、へえ、山猿だ。
金太 俺が、山猿なら、姉ちゃんなず、芋虫だ。なあ敦子おばさん。
敦子 (ハアハア言いながら、登ってきたのが)ほっほ、山猿に芋虫? お仙ちゃんが芋虫なら、私なぞ石ころね。これっぱっち登っても息が切れて、おばあちゃんはもう駄目、ここらで休んでいかない?(言いながら草の中に腰を下してしまう)
金太 へえ、こんなところで休んでたりしてたら、山へなんか行かれるもんかよ。ここはホンのまだ、新しい県道のすぐ上だぞ。
お仙 へえ、そうかよ? 新しい県道はこんなところへ出てるのか?
金太
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