きりでね。しかし外国ではスカンヂナヴイヤや高い土地ではスイスなどの寒い所でもチャンと農業国としてやっとる。勿論、日本では稲作というものがあるから、これは特別に研究される必要があるだろうが、しかし麦の出来る所で米が出来ないと言う道理は無い、理屈から言えばね、研究ひとつだと思う。ひとつしっかりとやってくれたまえ。私は山林やなんかの方で、チと方面は違うが、この奥でカラマツなどを種から育てて見たいと思っている。そいでまあ、別荘――と言うほどでもないが、ここらに小屋でも建てて毎年やって来てすこし本腰をすえてやりたいと思っとるんで、そうなれば君たちの研究の相談相手ぐらいにはなってあげられようかと思う。
壮六 はあ、どうぞよろしうお頼みいたします。なあ金吾!
金吾 うむ。……
壮六 実は私は試験所の方で稲作の方の勉強を主にやっとりまして、この金吾とは小さい時分から一番仲の良い友達でやすもんで、行く行くは二人で力を合わせて、この奥を開いて見べえと言う約束でがして、はあ。金吾は、もうこいで、落窪のはずれの山を二段歩ばかり買っているんでやして。
勝介 そりゃ、えらい。落窪というと――?
壮六 間もなく、そ
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