? どうだろう君?
壮六 そうです、たしかあれがタデシナで。だなあ、金吾?
金吾 うむ……(と低い声)
壮六 お前どうにかしたんか?
金吾 いや……
壮六 急に黙りこくっちゃってさ。
勝介 いいんだ、いいんだ。ハハ……(とこれは田舎者のはにかみには馴れていて、金吾をそれだと思っている)
春子 あらら!(と言ってから口を手でふさいで下を向いてクスクス笑い出す)フフ、フフ、フフ!
勝介 なんだ? え? どうしたんだ?
春子 フフ、いえ、あの……フフ、フフ!
勝介 なにがそんなに――?
春子 だって、フフ……(父の耳元へ口を寄せて小さく)あの手! なんてまあ、ほら!あの方の――
勝介 (これもすこし小さくした声で)うん、手をと?……(向う側に坐った金吾の両手に眼をやって、これもびっくりして)おお、なるほど!
春子 ね、お父様、フフ……
勝介 うむ、こらあ大きい!(これも笑い出している)
春子 フフ、まるでミットみたい!
勝介 見事だ、うむ、ハハ!
壮六 はあ? なんでございましょうか?
勝介 いやいや、なんでもない。この、金吾君といったか、柳沢だね? この人の手があんまり、大きいもんだから、
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