すこの――
勝介 うん?
金吾 私は柳沢、金――(と言ったトタンに春子の顔を正面に見て、ギクッとしてキンと言ったきり絶句して、あと黙りこんでしまう)
壮六 (馬車にのりながら)さあ、お前も乗りなよ金吾。どうしただい?
勝介 さあさ、こっちがいいだろう。(春子に)なんだな春?
春子 ううん、あの――(と、これはビックリして金吾を見守っている)
壮六 (馭者に大声で)小父さんよ、馬車あ出してくんな!
馭者 (耳が遠い)あん? 出すのか? よしよし、(パチリとムチを鳴らして)こうらよ!
壮六 さ金吾、乗るだよ!
金吾 うん(口の中で言って、ギシギシと馬車に乗り込む。同時にパカパカと馬が歩き出し、ギイコトンと馬車が動き出す)
勝介 すまなかったねえ、お仕事中に引っぱり出して、開墾やっとるそうだな?
金吾 は……(と、これも口の中で)
勝介 骨が折れよう、ここらの山では、えらい砂が混っとる筈だ。
金吾 は……(同様、話のつぎほが無い)
春子 ……お父様、あのね、あすこに見えるあれがタデシナじゃありませんの? あの黄色い、ビョウブみたいな格好の――?
勝介 そうさな、ここからタデシナ山が見えるかな
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