ノゾウリの音を忍ばせてベンチの背後に来て立聞いていたのが、寄って来て)春子には後で私から言うから、その金は私に貸しといてくれないかねえ?
敏子 あら、お父さん! いつの間にここへ?
敏行 へへ、金吾君が訪ねて来て二人でこっちへ来たと言うからね後をつけてきたが、夢中になって気がつかないようだったな。
金吾 こりゃ、敏行さまでやしたか。しばらくお目にかからねえで。
敏行 やあ、はは、君あ相変らずお元気のようだね。私は、ごらんの通り、もういけないよ。今では妻や子供にも捨てられてしまったようなテイクラクでね。
敏子 嘘っ! 嘘だわ! お母さんや私を捨てたのはお父さんじゃありませんか。おめかけさんが二人もいたのを忘れたと思つて? そして今は又私を芸者にしようとしている。よくもそんな大嘘を!
敏行 まあまあ。お前なぞにはなんにもわかりゃしないんだ。いや金吾君、いろいろわけがあってね。はは、春子のあとで一緒に暮していた女とも別れてね。いや人間落ちめになるとみんな離れて行くもんだ。横田なんて奴が今じゃハブリをきかしてな、春子などもその後いろいろ男を渡り歩いて、間に、横田のめかけみたいになった事もあるら
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