か長坂へ下るか、都合で明日までかかるかもしれんが、日当はちゃんと出して下さる模様だ。俺あどうせ、落窪にちょっくら用があるからな、そこまで一緒に連れなって行って、直ぐ試験所へ戻らざならねえ。
金吾 困るなあ。もうへえ、あと二日もやれば、ここの仕事はおえるとこだからな。
壮六 いいだねえか、地面がお前、飛んで逃げて行きやしめえ、頼まれてくんなよ。それが俺の考えたなあ、お前は行く行く、この奥で百姓する男だ。そんな偉いしが別荘建てたりするのと知ってれば、又なんか都合の良え事もあらずかと思ってよ。
金吾 うん、そりゃそうかもしれんが……んでも、そんな東京のしなんずと口いきくの窮屈で俺あ、ごめんだなあ。
壮六 ハハ、なあによ、どうであんな衆から見りゃ、ここらの俺たちなんぞ、熊かなんかと同じもんずら。挨拶のしよう一つ知らなくても、かまうもんかよ。さあさ、行くべし、行くべし!
金吾 そうかあ。んでも、このマン鍬、かたずけて――
壮六 (もう崖下へ向って歩き出している)なあに置いとけまさか、トンビがその重いもん、くわえて行きやしめえ、ハハ!
金吾 (これもその後に従つて歩き出しながら)だけんど、ちょっく
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