烽セ。
金吾 どうも、ありがとうございやして……
(下駄の音をひびかしてそちらへ近づき、門前に立ちどまって、ちょっとためらっていてからオズオズと敷石道を玄関へ)……ええ、ちょっくら……(言いかけてから、呼鈴を見つけて押す。奥でブザーの鳴る音)
鈴 ……(ちょっと間があって、足音をさせて玄関の内に出て来て、ドアを開ける)……いらっしゃいまし。
金吾 ええ、今日は、ごめんくださいまし。ええ、こちらは黒田様という方の――
鈴 え、黒田様――と申しますと?
金吾 あのう――わしは柳沢金吾というもので、はい、長野県から参りました柳沢と申すものでございますが、こちらに黒田様という方がいらっしゃるとかで――?
鈴 いえ、こちらは石川と言いまして――黒田さんというのは、どういう? それは、もしかすると、横田さんのおまちがいじゃございませんかしら?
金吾 横田さんでがすか?
鈴 こちらは石川名儀になっていますけど、ホントの御主人は横田でございまして――。
金吾 いえ、黒田にまちがいはねえんでやすが――(話がトンチンカン)
鈴 それでは、ちょっとお待ちくださいまし、奥で伺って参りますから[#「参りますから
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