vは底本では「参まりすから」]。
金吾 どうも、すみませんです。(女中が廊下を奥へ歩いて行く足音――マイクはそれに従って行く)……
鈴 ……あのう(言いかけた言葉をたち切って奥座敷の障子の内から、けんだかなヒステリックな女の声)
浜子 石川さん、あんたがいくらそんな事を言ったって横田の気持はもうトックにあたしから離れて、柳橋の梅代の方にいっちゃっているんだから、なんのかんのと言ったって、もう駄目だわよ。今更になってそんな仲うど口をきくのはよしてちょうだい。
石川 そりゃしかし浜子さん、そりゃちがう。社長はいよいよ満洲で戦争がはじまったんだから、セメント山もセメント山だけど、鉄の方に手を出すつもりで、関東軍の大どこと引っかかりをつけてくれるような軍人をつかまえようというんで目下血まなことに[#「血まなことに」はママ]なっているんだから、柳橋の方に入りびたりになる暇なんぞ全然ないですよ。十日や二十日こっちへ寄らないからと言って、浜子さんのように気を立てることは要らないと思うんだ。
浜子 そりゃ石川さん、あんたが横田という人間をよく知らないから、そんな事言うんだ。私は十四年以来の仲ですからね
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