トントン叩いて拍子をとりながら、ウットリとして歌いつづける)かいのしずくも花と散る。――
   ――(その歌の中に)


[#3字下げ]第2回[#「第2回」は中見出し]

[#ここから3字下げ]
 金吾
 壮六
 春子
 勝介
 敦子
 敏行
 鶴

(音楽)
[#ここで字下げ終わり]

壮六 (ポキポキと枯小枝を踏んで崖道からあがって来ながら)おい、金吾よう!
金吾 やあ、壮六かよう。うっ!(と、重い開墾鍬を小石まじりの土にガッと打ちこんで)……どうしただよ、今時分?
壮六 うん、県庁の斉藤さんに頼まれてなあ、東京の偉え人を案内して急にこっちいのぼって来ただ。……おうやしばらく来ねえ内にここはもうスッカリ開墾でけたなあこいつは、立派な畑になるぞ!
金吾 (気持よさそうに笑って)ハハ、畑だあ無え、水田にすんだ。もうへえ田ぶしんの石垣つめば、水あこの上から引けることになってるしよ。
壮六 なんとなあ――、うむ! だけんど、お前ほどタンボの好きな奴もねえなあ! こうして、ウンウン言って次ぎから次ぎと旦那衆の山あ開墾しても僅かな日当くれるだけで一坪だってウヌが田地になるわけでも無えに。
金吾
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