ネんとか言ったっけ、金――金助、いや金吾――さんだったっけか、暫くだったねえ。
金吾 ええと、あんたは――ああ、あん時の――横田さんでやしたね。その節はいろいろお世話になりやして。
横田 いやあ、ははは。あん時あ黒田君に頼まれて、ここの土地を売り払いに来ただけでね、別にお世話になったと言われても、へっへっへ、どうだいその後? (連れの男をふり返って)石川、それじゃな、お前は馬車の所に引返して、そう言っといてくれ。間もなく駅までまた戻るから、いっ時待っていてくれって。
石川 へい。だけど、社長だけで大丈夫ですかね。
横田 なあに、たかが女子供だ。お前は向うで待っててくれ。
石川 へい、そいじゃ(森の中を、もと来た方へ引返して行く)
横田 ははははは(畑を突っ切って別荘の方へ歩いて行きながら)金吾君、春子は別荘の中だろ?
金吾 え、春子?
横田 なんだ? はは、なる程、呼びすてにしたのがいけないかね、へっへへ、なる程君にとっちゃ変に聞えるかも知れんな。しかし、あれから七、八年たっているんだぜ。世の中は動いているよ。今じゃ、この私がセメント山の社長でね。黒田さんは引退しちゃって、今は何処に居
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