a気が治ったと思ったら、あの人は別の女の人と行方知れずになって、その後横浜にいるといいますけどね、セメント会社の方は、いつの間にか横田が社長のようなことになって……この六、七年をふり返ってみると、ホントに言うに言いきれないひどい目にあってきたわけなの。だのに、どういうんでしょう? そういう苦労はただ辛いだけで、ホントはちっとも身にしみないの、ただもう、体が弱りに弱るだけで、なにか自分の生活はここでこうしているこの生活だがはっきりわからないけど、どうも今自分がひどい目にあったり、相手にしているおかしな男の人などはみんな嘘で、別にどこかに私のホントの暮しはある、私のホントの相手の男の人は別にどこかにいる、そういう気がするの。そう思うと、きっとなくなったお父さまのことを思い出すのよ、だもんだから私を相手にする男の人が、すぐ私のことをつまらながるのね、すぐあきるの、面白くない、お前は空っぽだ、そう言うのよ、その筈だわ、からっぽですもの、わかる私の言うの、金吾さん。
金吾 俺にゃよくわからねえ、どうも。
春子 それで、そうやってさんざんな目にあって、その間、この敏子を抱えて、その間、二度も三度も
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