ゥりいると、また身体悪くなさるから――
春子 ……(涙をふいて、カラリと明るい声で)ホホもうなかない、かんにんしてね、木ぶつ金ぶつはこの私だわ。こうしてさんざん苦労してやってきながら、その苦労が身にしみてだんだんかしこくなるということがないのよ。苦しい目にあうと、ただ苦しいだけで、どこかしらそれが上すべりをしてしまって、ボンヤリとただないているだけ、自分で不感症かしらと思うことがあるの。この六、七年にしたって、世間並から言えばずいぶんいろいろな目にあってきているのに、ただボウーッとして一つ一つのことは忘れちゃったようになってる。あれから敏行が会社の株式をゴマ化したとかで牢屋に入って一年半ばかり、小笠原さんや、横田などの言うとうりになって、ずい分いろんな目にあったの、しまいに敏行を助ける金をつくるためだというので、千葉の方へ行って芸者に出たりまでしたのよ、それから銀座の方で、割烹料理屋につとめたり、しまいに秩父の方の、そのセメント山の事務所の留守番をやらされたり、それで敏行がやっと牢屋から出てきたかと思うと病気になってね、その入院の費用を稼ぎ出すために、また銀座へ戻って、する中に、敏行の
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