がして。

[#ここから3字下げ]
(ガラ、ガラ、ガラと車輪の音、トテ、トテ、トテーとラッパ)
[#ここで字下げ終わり]

春子 あら、ら!
勝介 どうした春?
春子 ほら、ほら、あれごらんなさい、お父様! あすこ!
勝介 ははあ、子供たちが泳いでいるな。おお、おお!
春子 それがね、私、あの岩の上に、なんだか赤い岩が乗っているなと思って見ていたの。そしたら、ラッパが鳴ったと思ったら、その赤い岩がいちどきにこっちを向いてピヨンと飛びあがって、両手をあげて、そいで、ポンポン水の中にとびこんだの! まるで蛙だわ!
勝介 はは、いいね。この辺の子たちも!
壮六 (笑いを含んで)こういう寂しい所なもんで、よその人でも馬車でも、何を見てもハシャグんでして。
春子 私も泳ぎたくなった。泳いじゃいけないお父様?
勝介 そら、いかん! この辺の子は馴れているからよかろうが、春があの水につかったら、いっぺんにふるえあがる。冷たいのだ、ここらの水は。
春子 くやしいわあ!
壮六 さ、来やした。この上ですから――(馭者に大声で)小父さんよ、ちょっくら停めてくんない。
馭者 ああ?、停めるか? よしよし、どう
前へ 次へ
全309ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング