ば県の方へジカに私から話せばよい事だろうが、その前に土地のことをいろいろ聞いときたい。
壮六 はあ、それは、その柳沢の金吾――先ほど申しあげました――私よりも金吾の方がこのへんから奥のことについてはくわしいものですから、海の口から先きは金吾に案内いたさせようと思っております。同じ馬流の生れでありまして、私とは幼な友達で、ズーッと海の口のはずれで開墾に雇われて稼いでいる、しっかりした男です。
勝介 金吾君と言うのかね、そんなにこの辺のことをよく知っている――?
壮六 はい。もうズーッと、この奥で高原地の百姓したいと言うんで、そいで土地を買う金を溜めるために開墾で働らいている奴です。家が微ろくしちまって――それに、、この辺の平坦地には、もう余分の田地はありゃせんから。
勝介 そうさねえ、うむ、そりゃ、この辺の高原地はやりようで麦やジャガイモや、それから酪農、まあ北海道へんのような農業には向くかもしれん。そうかね、そりゃ、私の方でも、そういう人には会ってみたい。君の友達と言うと、まだ若い人だね?
壮六 はあ、私と同い年です。ああ、そろそろ海の口です。あの右手の崖の上の雑木林で働らいているので
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