笑いつつ、それを無視して、壮六に)夏休み中にどうしても信州へ連れて行けと言うんでね、はは。いや、もともと、高い山の中で生れた子でね、わしが北海道の奥の高原に入りこんで、あの辺の林を見ていた時分――そこでまあ、生れて、育ってこれの母親は、そこでまあ死んだが――そういうわけかね、むやみと高い所が好きだ。どうしてもついて来ると言ってきかん――それに、この辺でカラ松を実生から育てて、苗木を出そうと言う仕事を見てくれと、ここの県庁あたりから頼まれていることもあり、わしもこの辺は何度も来て好きなんで、この奥あたりに時々やって来て住めるような小屋を建ててもよいと思っているもんだから、その下検分と言うかね。
壮六 そうでございますか。この辺も早く鉄道でも通ってくれると、ありがたいですが。
勝介 いやいや、いずれ小諸あたりから鉄道は通じるだろうが、これで戦争成金なんかじゃない、まあ山ばかり歩いている学者でね、まあ、貧乏人が山小屋たてようと言うには軽井沢へんよりはここらがよかろうと言うのさ。なにかね、この辺で、土地や山林を貸すとか売るという話はどんな人に相談したらよいのかね? いや、いずれそういう事になれ
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