すが――いえ、馬流にもゴム輪の馬車の二台ぐらい有るのです――県庁の斉藤さんからも是非それを仕立てるようにとの事でしたが、あいにく二つともこわれていまして、こんな、どうもガタクリで。
勝介 なに、結構だ。この方が、かえって気らくで良い。なに、今度は本省の方とは関係のない、まあ私用の旅行でね、県庁の方も素通りして来た位だったが、昨夜馬流に泊ってさ、考えてみると、これが附いて来ている、当人は初めからの約束で歩くと言うが、そうもならんし、それにどうせ案内の人は欲しいんで、ツイ県庁の方へ電話したら斉藤君が騒ぎ出して、どうも君にまで御迷惑をかけてしまった。
壮六 いえ、その、迷惑などとはとんでもございませんで。ホントは斉藤さんが飛んで来なきゃならんが、あいにく県農会の会議があるんで、おめえ行ってくれって――私は農事試験所の助手のようなことしていやして――はあ、いえ、おもに稲作の方のことをナニして――出身が馬流でやすもんで、はあ。
勝介 まあまあ、そう窮屈にしないでラクにして下さい。とにかく、こういうヤンチャなコブがくっついて来ておる。
春子 だってお父様、この春からのお約束じゃなくって?
勝介 (
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