iしばらくして、今すれ違った馬が歩きながらヒヒーン、ヒヒーンといななく)
春子 (その声にビクッと眼がさめて)お、お父さま! 助けてお父さま、助けてちょうだい! お父さま!
金吾 春子さま、どうしやした? 春子さま!
春子 ああ金吾さん。どうしたんですの? ここ、どこ?
金吾 金吾でやすよ。信州でやすよ。海の口だ。これから別荘へお連れしやすから、どうか安心して、
春子 ああ、(と安堵のといきをついて)あの、お豊さんという方は――?
金吾 お豊さんがあんたさまを助けてくれて、そいで俺の方に知らせてくれたんで、こうして俺あ迎えに来たんでやす。
春子 そう、ホントに……今、なんか仔馬が鳴かなかった?(あたりを見まわす)
金吾 へえ、鳴きやした。
春子 私……なんか、お父さんと一緒に、あの馬車で行ってたの。夢を見ていたのね。ふう。……(とといきをついて周囲を見まわす)
金吾 そうでやすか。(言いながらリヤカアを引いて歩む)
春子 ……ホントに金吾さん、すみません。こんな御心配かけて。……私、東京では、もう、どうしようもなかったの。敦子さんにはあんまり度々御心配をかけたし、悪くってもう行けなかっ
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