ヨ子 (内から)ああ、金吾さん? やっと帰って来たのね?
金吾 ふえっ? どなたで――?
敦子 (立って土間をこちらへ来て)神山の敦子よ。お忘れになって? 敦子ですよ。
金吾 ああ、敦子さま! そ、そ、それが、どうして今ごろ――?
敦子 御挨拶は後でします。そいで、その春子さんの別荘と山林や畑は、もう売れてしまったんですの? いえ、私ね、春子さんからその話を聞いて驚ろいて、飛んで来たの。え、売れてしまったんですの? 私、こうしてここに五千円準備して来たんだけど、これで間に合うかしら? いえ、あれが売れてしまっては、春子さんも、あなたもお気の毒だと思ってね。
金吾 いえ、あの、まだ――その、あがりなして、敦子さま! 俺あ、へえ、あの、ありがとうござりやす。――(と、支離めつれつに言っている内に涙になって、フラフラッとして土間にドシンと尻餅をつく)
敦子 あら、どうなすったの金吾さん! しつかりしてね、どうしてそんな――
金吾 俺あ、俺あ、俺あ、――(と涙で何を言っているかわからなくなる)
音楽
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